Job総研調査、94.3%が「退職の心理的ハードルが下がった」と回答

  • 2025-03-24
  • 2026-05-18
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Job総研(パーソルキャリア株式会社)が2025年3月に公表した「退職に関する意識調査」で、社会人の94.3%が退職への心理的ハードルが「下がった」と回答した。この数字は特定の年代だけに起きている変化ではない。20代から50代まで、すべての世代で9割を超えた。「辞めてもいい」という感覚が社会全体に広がっていることが数字に表れた。ただし、意識の変化が行動の変化を意味するかどうかは、別の話だ。

「辞めてもいい」が当たり前になった

94.3%の内訳が示す本気度

94.3%という数字の中身を見ると、「とても下がっている」と断言した人が27.7%、「下がっている」が41.8%、「どちらかといえば下がっている」が24.8%だ。「なんとなくそう感じる」ではなく、7割近くが言い切りの言葉で変化を認識している。20代と40代が96.5%と最も高いが、50代でさえ91.9%に達する——この意識変化はもはや若者特有の感覚ではなく、働くすべての世代に共通する空気になっている。

「とても下がっている」「下がっている」の合計だけで69.5%。「なんとなく」ではなく、確信を持った意識変化である

4人に1人が「今」退職を検討中

意識の変化は、すでに行動の検討へと移りつつある。調査では26.5%——約4人に1人——が現在進行形で退職を考えていると回答した。「いつかは辞めたい」という漠然とした気持ちではなく、今この瞬間に選択肢として退職を視野に入れている人がこれだけ存在する。では、なぜここまで変わったのか。

ハードルを下げた3つの地殻変動

理由1位「一般的な選択肢になった」

退職のハードルが下がった理由として最も多くの人が挙げたのは「一般的な選択肢となっている(79.3%)」だ。かつて退職は「根性なし」「逃げ」と見られることもあった。いまはそうした視線が薄れ、次のステージへ進む手段として普通に扱われるようになった。次いで「無理に長く勤める必要性がない(51.4%)」が2位に続く——「石の上にも三年」、つまりとにかく3年は我慢して続けろという暗黙のルールが、現実の感覚から切り離されつつある。

「一般的な選択肢」79.3%と「長く勤める必要がない」51.4%——上位2つは「退職=逃げ」という価値観の崩壊を示している

物価高が「現状維持」をリスクに変えた

退職判断に影響する外部要因として「経済(物価高と給与の関係)」を挙げた人は55.6%でトップだった。食料品や光熱費が上がり続ける一方、給料がほとんど変わらない。「このまま同じ会社にいても損をする」——そんな計算が、感情ではなく経済合理性として退職を現実的な選択肢に押し上げている。「辞めたい」という気持ちは個人の感情だったが、物価高がそれを家計の問題に変えた。

入社1年で見極める時代へ

退職を検討し始めた時期として「入社1年以内」と答えた人が27.6%で最多だった。「とりあえず3年いれば評価される」という感覚は薄れ、早い段階で「この職場は自分に合っているか」を判断する人が増えている。77.8%が「早期離職は当たり前」と答えながら、59.2%が「3年はいた方がいい」とも答える——頭の中での価値観の更新は、まだ途上にある。

それでも辞められない——意識と行動の矛盾

意識が変わっても、行動はついてこない。辞めたくても「辞められなかった経験がある」と答えた人は54.9%——半数以上が、気持ちとは裏腹に動けずにいる。

最大の壁は「転職先への不安」

辞められなかった最大の理由は「転職先が見つかるか不安(76.9%)」だ。2位は「一時的に収入が減る不安(38.6%)」。退職への心理的なハードルは下がっても、転職活動に踏み出すための実行ハードルはそのまま残っている。「辞めていい」とは分かっていても、次の仕事が見えない不安が足を止める。

心理的ハードルは下がっても、「次が見つかるか」という実行面の不安は変わっていない

同僚の退職が背中を押す連鎖構造

一方、周囲の動きが引き金になるケースも多い。同僚が退職したとき「自分の転職意欲が上がる」と答えた人は68.1%に上る。「辞められない」と「周りが辞めると触発される」が同じ人の中で同時に存在する——その不安定さが、今の職場環境を特徴づけている。一人が動くと次の一人が動く。その連鎖の構造がすでに多くの職場に組み込まれている。

この調査が突きつけること

では、この矛盾の先に何があるのか。現在の職場で今後何年働くかを尋ねた設問では、平均3.2年・最頻値3.0年という数字が出た。「3年で次へ」が、多くの働く人にとって標準的なキャリアの区切りになりつつある。

この数字が問いかけるのは、個人よりも企業の側だ。「3年で辞めることを前提にした採用・育成モデル」を構築するのか、「3年を超えても働き続けたいと思わせる職場」をつくるのか——Job総研は企業にその二択への転換を提言している。

94.3%という数字は、「辞めやすくなった社会」の輪郭を描き出した

94.3%という数字は、現状への不満の表れであると同時に、働き方の選択肢が広がったことへの期待の表れでもある。「辞めやすくなった社会」の輪郭を、この調査は数字として描き出した。

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