2025年1月6日、仕事始めの月曜日、退職代行サービス「モームリ」(運営:株式会社アルバトロス、料金22,000円)に1日で256件の依頼が集まり、過去最多を更新した。前回の最多記録180件から42%増。依頼者のほとんどは当日の朝ではなく、前夜のうちに「もう行かない」と決めていた。
退職代行とは会社への退職意思を代わりに伝えるサービスで、依頼した日から職場に行かずに済むことが多い。企業の4社に1社が「使われた経験がある」と答えるほど、いまや珍しいサービスではない。
2025年1月6日、256件が集中した経緯
前日夜から始まっていた
決断は仕事始め当日ではなく、前夜に済んでいた。1月5日夜の時点ですでに199件の予約が入り、翌朝7時24分には230件、最終的に1日の受理件数は256件となった。
依頼者の内訳は正社員202名(79%)、パート・アルバイト24名、契約社員18名、派遣社員11名。約8割が正社員という構成だ。年齢層は20〜30代が全体の約7割を占めたが、依頼者の中には71歳の最高齢者もいた。では、この正社員202名は、なぜ自分では辞めを言い出せなかったのか。
| 時期 | 受理件数 |
| 前回最多 | 180件 |
| 2025年1月6日 | 256件(+76件・前回比+42%) |
正社員の8割が「自力で言えない」職場
「責任がある立場だから辞めにくい」——そう感じている人ほど、退職代行を選ぶ。全体の79%が正社員という構成は、この構造の裏返しだ。
モームリが公表した依頼者の申告には、職場の実態を示す具体的な事例が含まれていた。「職場で倒れて点滴を打った直後も、そのまま働き続けるよう指示された」「業務中のケガを労災として申請しないよう指示された」という内容だ。こうした職場では、本人が「辞めたい」と申し出ること自体が困難な状況にある。
退職理由として最も多く挙げられたのは、精神的な不調だった。では、なぜそのメンタル不調が、仕事始めのこの日に集中したのか——9連休が、その引き金になった。
9連休が「もう戻れない」を固めた
2024年12月28日から2025年1月5日まで、最大9日間の連休が続いた。
職場にいる間は、長時間労働や理不尽な指示に少しずつ慣れていく。「これが普通だ」と思い込むことで踏ん張れる。しかし9日間、仕事と切り離された状態が続くと、その感覚がリセットされる。職場の外から見て初めて「あれはおかしかった」と気づく——それが、連休中に起きた。
前日夜の199件という予約数は、この心理を端的に示す。「明日の朝に決める」ではなく、連休最後の夜に「もう行かない」と決断した人が199人いた。
この現象は1月6日だけではない。同年5月7日、GW明けにも256件の依頼が集中した。長期連休が明けるたびに同規模の需要が発生する構造は、繰り返す社会現象として定着しつつある。