マイナビ企業調査、社員に退職代行を使われた経験23.2%に上昇 4社に1社

  • 2025-05-31
  • 2026-05-18
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退職代行とは、本人の代わりに会社へ「辞めます」と連絡するサービスだ。弁護士や専門業者に数万円を払えば、利用者は職場に一切顔を出さずに退職手続きを進められる。そのサービスを使って辞めた社員がいる企業の割合は、2024年時点でおよそ4社に1社——5年前から1.5倍に膨らんだ。ただ、企業側の対応は「受け入れ」から「拒否」へ傾き始めており、「どの業者でも通じる時代」は終わりつつある。

4社に1社──5年で1.5倍になった現実

2019年から2024年への推移

マイナビが2024年10月に発表した調査によると、2024年上半期に退職代行を使って辞めた社員がいた企業の割合は23.2%。おおよそ4社に1社にあたる数字だ。

2019年時点では15.5%だった。それが2021年に16.3%、2022年に19.5%、2023年に19.9%と毎年上昇し、2024年に23.2%へ達した。5年間で約1.5倍の水準となる。急に普及したというより、じわじわと積み上がってきた数字だ。

誰が使っているのか

マイナビ キャリアリサーチLabの調査レポートによると、業種別では金融・保険・コンサルティングが31.4%で最も高く、IT・通信(29.8%)が続く。職種別では営業職が25.9%で最多だ。特定の業界だけの話ではなく、幅広い職場で日常的に起きる出来事になっている。

企業側が生んだ「対話の不全」

なぜここまで増えたのか。退職代行を利用した人たちの理由を見ると、需要を作っているのが企業側だというデータが浮かび上がってくる。

利用理由の4割は「引き留め」

退職代行を使った理由として最も多かったのは「引き留められた(引き留められそうだ)」で、マイナビの同調査では40.7%がこれを挙げた。「引き留め」とは、上司が何度も翻意を促す、人事部が退職届を受け取らない、「もう少し待って」と先延ばしにされ続けるといった状況を指す。

「相談しても何も変わらない」「不満を言ったら評価が下がるのが怖い」——こうした心理が、数万円を払う選択に人を向かわせる。退職代行の需要を作っているのは、利用者の「面倒を避けたい」という気持ちだけではない。企業側の「辞めさせない」姿勢が、需要の土台を作っている。

退職代行が増えた最大の原因は企業側の「引き留め」——需要を生んでいるのは企業自身という構図

企業規模別では、大企業で退職代行に遭遇した割合が21.3%なのに対し、中小企業は7.8%。約2.7倍の開きがある。組織が大きくなるほど手続きが複雑になり、「辞めたいと切り出しにくい構造」が強まる傾向が見える。

同調査では退職代行を一度利用した人の74.2%が「今後も利用したい」と回答している。「話し合いが成り立たない」という経験を一度すると、次回も直接交渉を試みることなく代行を選ぶ——会社と従業員が直接話し合う機会そのものが失われていく。

優秀な中堅ほどダメージが大きい

同調査によると、退職代行で辞めた社員がいた企業のうち68.8%が「業務への影響があった」と回答している。特に勤続年数の長い中堅社員が突然いなくなるケースでは、業務の引き継ぎが行われないまま現場に穴が空く。

企業側の反応は「拒否」に傾いた

3割の企業が業者を無視

東京商工リサーチが2026年4月に実施した調査(有効回答6,425社)では、弁護士や労働組合以外の退職代行業者について「非弁行為の可能性があるため取り合わない」と答えた企業が30.4%に達した。一方で「業者を通じて手続きを進める」は41.3%。対応が二極化している構図だ。

「資格のない業者」問題が背景に

拒否が広がった直接のきっかけは、2026年2月の業界大手の摘発だった。退職代行モームリを運営する株式会社アルバトロスの社長らが、弁護士資格を持たないまま有給取得の交渉や退職日の調整を行った疑いで起訴された。弁護士法72条は、弁護士資格を持たない者が報酬を得て法律事務(交渉・調整など)を行うことを禁じており、これに違反する行為が非弁行為と呼ばれる。業界最大手の一角が摘発されたことで、企業側が「どの業者でも同じに扱う」姿勢から転換した。

ただし、企業が感情的に拒否すれば何でも正当化されるわけではない。日本退職代行協会(JRAA)が紹介した事例では、退職代行からの連絡を拒否した企業の社長が給与の支払いを停止した結果、労働基準監督署から是正指導を受けた。「業者を無視すれば解決する」という判断が、別の法的リスクを招いた形だ。

企業側の拒否は一つの選択肢として定着しつつある一方、対応を誤れば企業自身が法的不利益を被る——その両面が、2026年現在の状況を作っている。

使う側が知っておくべき変化

退職代行を使えばどの業者でも会社に受け入れられた時代は終わりつつある。業者の種類によって、手続きが通るかどうかが変わる局面が増えている。

業者選びで結果が変わる時代

会社が応じやすいのは、弁護士か労働組合が運営する業者だ。理由はシンプルで、法的な交渉を代わりに行う権限がある。「有給を消化したい」「退職日を調整してほしい」——こうした場面では、この権限の有無が結果を分ける。民間業者は「辞める意思を伝える」連絡役としては機能するが、会社が交渉に応じない場合、そこで詰まるリスクがある。

業者の種類 できること・できないこと
弁護士・労組運営 法的な交渉権あり。有給消化・退職日調整など条件交渉が可能。会社が拒否しにくい
民間業者 連絡代行のみ。退職の意思を伝えることはできるが、交渉権がなく会社が応じない場合に詰まるリスクがある

利用歴が次の転職に影響する

東京商工リサーチの調査では、退職代行の利用歴が判明した場合に「採用に慎重になる(49.3%)」または「採用しない(26.0%)」と答えた企業が合計75.3%にのぼる。企業が採用選考で利用歴を知る経路は限られているが、前職への問い合わせや背景調査で発覚するケースがある。退職後の転職活動で不利に働く可能性がある点は、使う前に把握しておくべき現実だ。

退職代行の利用歴が判明した場合、「採用に慎重になる」「採用しない」と答えた企業が合計75.3%。前職への問い合わせや背景調査で発覚するケースがあり、次の転職活動への影響は使う前に押さえておきたい。

2026年現在、企業の30.4%が民間業者の連絡に応じない。利用歴が採用判断に影響すると答えた企業は75.3%。弁護士・労組運営の業者と民間業者では、手続きの通りやすさに差が生じている。この3つの数字が、退職代行を巡る現在地だ。

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