行政書士監修の「AI退職代行」登場、2,980円で即日架電に対応

  • 2025-01-14
  • 2026-05-18
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2026年1月、AIが会社に電話をかけて退職を伝えるサービスが2,980円で登場した。従来の退職代行は2〜3万円が相場で、「頼みたいが高すぎる」と踏み切れなかった層にとって、価格は携帯料金の月額並みまで下がったことになる。退職代行はすでに一般的な選択肢となっているが、価格帯が変わることで、これまでとは異なる層が動き始めている。

AI退職代行が2,980円で登場した

SG株式会社とSG行政書士法務事務所が2026年1月26日に提供を開始した「AI退職代行 by 行政書士」は、税込2,980円・24時間対応・最短10分の手続き完了を掲げる。株式会社エヌアンドエスの「退職あんしん代行」も同じく2,980円で展開しており、複数社が同価格帯に参入した形だ。

価格の根拠はシンプルだ。従来の退職代行は担当者が会社に電話をかける人件費がコストの中心を占めていた。AIがその役割を担うことで、人件費をほぼゼロにし、従来比で約10分の1の価格を実現した。

2,980円に含まれるものと含まれないもの

「2,980円で退職できる」と言っても、何がこの料金に含まれるのかは確認が必要だ。退職あんしん代行の場合、AIによる架電・録音・文字起こしと行政書士による退職届の書類作成が基本料金内に含まれる。郵送費・内容証明郵便の発行費用は別途になるため、申し込み前に料金明細を確認したい。

AIはどう会社に電話するのか

対話型AIの通話の流れ

AIが会社に電話するといっても、録音テープを再生するわけではない。退職あんしん代行が採用するのは、OpenAI APIとTwilioを組み合わせた自動架電システムだ。担当者の返答を聞き取り、文脈に応じて応答する双方向の対話を行う。ただしAIが伝える内容は「退職の意思表示」に限定されており、条件交渉や引き止めへの対応は行わない。利用者はLINEや申込フォームに氏名・退職希望日・職場情報を入力し、スマートフォンで身分証を撮影するeKYC(本人確認)を完了させれば、自分で電話をかけることも受けることも不要だ。

録音と文字起こし、内容証明郵便で証拠が残る

通話はすべて自動で録音・文字起こしされ、利用者に提供される。人間のオペレーターが電話した場合に起きやすい「そんなことは言っていない」という事後の言い争いを、記録が残る構造で抑える設計だ。退職の意思をさらに書面でも残したい場合は、内容証明郵便(郵便局が送付内容と日時を公的に証明する書面)を活用する手段がある。ただし内容証明郵便の作成・発送にかかる費用は2,980円とは別途になるため、確認が必要だ。

「違法にならないのか」——合法性の根拠と限界

AIが相手の返答を聞いて対話できるなら、退職条件の交渉もできるのではないか——ここに、このサービスが踏み込めない法的な線引きがある。

2025年10月、退職代行大手・退職代行モームリが警視庁の家宅捜索を受けた。容疑は弁護士法第72条違反——資格を持たない者が報酬を得て交渉などの法律事務を代行する「非弁行為」の疑いだ。この一件が、業界全体に「退職代行は使い方を間違えると違法になる」という現実を突きつけた。

交渉しない「使者」という設計

退職代行が法に触れるのは「交渉」をした場合だ。有給消化の日数を調整する、退職日を会社と折り合わせる——こうした行為は弁護士でなければ代理でできない。

AI退職代行はこの線を踏まない設計をとる。AIが会社に伝えるのは「退職の意思」のみで、条件交渉には応じない。「交渉する代理人」ではなく「意思を届ける使者」に徹することで、弁護士法の適用外に置こうとする構造だ。

行政書士が担保するもの

意思表示だけでは書類面が手当てできない。行政書士が関与することで、退職届の作成など書類手続きを法的根拠のある形で進められる。行政書士は官公署に提出する書類の作成を業務として認められており、退職に伴う書面手続きを合法的に担える立場にある。

ただし「交渉しない」設計は制約でもある。東京商工リサーチの2026年4月調査によれば、企業の30.4%が退職代行業者からの連絡を一切受け付けないと回答している。AI電話を会社に拒否された場合、このサービスに打てる手はない。

AI退職代行、弁護士型、労働組合型——何が違うか

交渉が必要かどうかで、選ぶべきサービスが変わる。

退職代行は大きく3種類に分かれる。AI退職代行(2,980円前後)、労働組合が行う退職代行(1〜3万円前後)、弁護士が関与する退職代行(3〜5万円前後)だ。

AI退職代行 労働組合型 弁護士型
価格帯 約2,980円 1〜3万円前後 3〜5万円前後
会社への意思表示
有給・退職日の交渉 不可 可(団体交渉権) 可(法的代理)
損害賠償・未払い残業代対応 不可 不可
向いているケース 意思表示のみで足りる場合 有給・退職日を調整したい場合 訴訟リスクや金銭請求がある場合

「辞める意思は固まっているが、自分では言い出せない」という状況であれば、AI退職代行で完結する可能性が高い。有給消化の日数を交渉したい、退職日を会社側と調整したいという場合は労働組合型が対応できる。未払い残業代の請求や損害賠償を請求されているケースには、弁護士型が必要だ。

2,980円で辞められる人・辞められない人

対象外の職種と返金の条件

公務員・自衛隊は労働基準法の適用外のため、このサービスの対象外だ。契約社員・派遣社員は利用できるが、契約期間中の途中退職は別途確認が必要になるケースがある。

有給消化の日数交渉や損害賠償を請求されている状況は、AIが「意思を伝えるだけ」では解決しない。こうしたケースには弁護士が関与する退職代行を選ぶ必要がある。

返金保証は「退職できなかった場合」に適用される。会社がAI電話を拒否した場合は返金対象になるが、申請方法・対応期間・手続きのタイムラインはサービスによって異なる。会社がAI電話を受け付けない場合に書面郵送など代替手段が用意されているかどうかも含め、申し込み前にサポート窓口で確認しておくことが重要だ。

このサービスが向いている人

「辞める意思は固まっている、ただ自分では言い出せない」——そこだけに特化したのがAI退職代行だ。正社員・パート・アルバイトを問わず、会社への意思表示が目的であれば2,980円で完結する。数万円の費用がネックで踏み切れなかった人、電話対応が苦手な層にとって、価格の障壁はほぼなくなった。

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