「自分の退職は有効なのか」——モームリ事件後、アディーレが示した回答

  • 2026-02-03
  • 2026-05-18
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モームリ代表逮捕、何が違法だったのか

2026年2月3日、退職代行「モームリ」を運営する株式会社アルバトロスの代表取締役(37)と従業員(妻)が、弁護士法違反(非弁提携)の疑いで警視庁に逮捕された。2022年3月のサービス開始以来、2024年7月時点で約1万6,000人が利用していた業界最大手の摘発となった。

容疑の核心は非弁周旋だ。弁護士資格を持たない者が報酬目的で依頼者を弁護士に紹介する行為は弁護士法で禁じられている。モームリ側は退職希望者を提携弁護士に送客し、1件あたり1万6,500円の「賛助金」名目の対価を受け取っていたとされる。モームリから依頼者の紹介を受けていた弁護士2名と弁護士法人2社も、弁護士法違反容疑で書類送検・在宅起訴された。

アディーレが即日動いた救済措置の中身

逮捕翌日の2月4日、弁護士法人アディーレ法律事務所は利用者向けの緊急無料相談窓口を特設した。対象はモームリを通じて退職手続きを進めていた人々だ。

LINE無料相談窓口の設置

アディーレはLINEを通じた個別相談を開始した。電話やメールではなくLINEを選んだのは、退職代行の利用者層——20代を中心とした会社員——に合わせた判断とみられる。相談内容は主に「自分の退職は法的に有効か」という一点に集中した。窓口の利用方法や受付期間などの詳細は、アディーレ法律事務所の公式サイトで案内されている。

不当利得返還請求という選択肢

アディーレはもう一つの選択肢として、モームリに支払った費用の返還請求(不当利得返還請求)の可否についても相談に応じると発表した。不当利得返還請求とは、違法な取引によって相手が得た利益を取り戻す法的手段だ。

請求が認められやすい状況としては、①サービスがほぼ未履行のまま費用を支払った、②退職の意思伝達すら行われていない段階で手続きが止まっていた、といったケースが挙げられる。一方、退職が実際に成立し、サービスの大部分がすでに履行されている場合は「利益を受けている」と判断されて返還額が減額されるリスクがある。また、違法性の認識の有無や契約書の記載内容によっても結果は変わる。

契約書・領収書・業者とのやり取りの記録を手元に準備した上で、個別に相談するのが現実的な進め方だ。

「退職が無効になる」は本当か

退職の意思表示は会社に届いている——これがアディーレの基本的な立場だ。モームリの違法性はあくまで送客構造にあり、依頼者が会社に「退職したい」と伝えた意思表示そのものは、原則として有効に到達している。

ただし、例外がある。業者が「意思の伝達」にとどまらず、会社との条件交渉や示談交渉に踏み込んでいた場合、その部分は弁護士資格のない者が法律事務を扱う非弁行為に該当しうる。こうした違法な法律事務を含む契約は、公序良俗——社会の秩序や道徳——に反するとして無効とみなされるリスクが生じる。

利用者が確認すべきは「モームリに何を依頼したか」という一点だ。意思の伝達だけを頼んでいたなら退職は有効である可能性が高い。交渉まで任せていたなら、個別に法律専門家への相談が必要となる。

事件後の動き——起訴・業界への波及

3月に起訴、刑事裁判へ

2026年3月、モームリから違法に依頼者の紹介を受けた弁護士2名と弁護士法人2社が、弁護士法違反(非弁提携)容疑で在宅起訴された。代表取締役らの逮捕からおよそ1か月、事件は刑事裁判へと移行した。送客する側と受け取る側の両方が摘発された構図は、退職代行業界と弁護士業界の双方に警戒感を広げた。

摘発後も続く需要、適法サービスへの移行が課題に

モームリ摘発後も退職代行への需要自体は減少しておらず、弁護士資格を持つ者が代理人を務める適法なサービスへの移行が、業界全体の構造的な課題として浮上している。

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