退職代行モームリ、2024年GW明け初日の予約が114件に到達

  • 2024-05-07
  • 2026-05-18
ゴールデンウイーク明けの初日、企業に114件の退職願が集中して届いたことが判明した。

2024年5月7日の朝、退職代行サービス「モームリ」への電話とLINEが鳴り止まなかった。GW明け初日だけで114件——平時の7倍の依頼が殺到し、スタッフ17名がフル稼働した。この数字はテレビやネットメディアに一斉に取り上げられ、退職代行という言葉を多くの人が初めて意識するきっかけとなった。あれから2年、その114件は「ピーク」ではなく「始まり」だったことが、その後の数字が証明している。

2024年5月7日、退職代行モームリに114件

平時の7倍が殺到した朝

2024年5月7日(火)、株式会社アルバトロスが運営する退職代行サービス「モームリ」には、GW明け初日の1日だけで114件の予約・依頼が集中した。通常の1日あたり件数の約7倍にあたる数字だ。スタッフ17名がフル稼働で対応にあたった。

退職代行とはどんなサービスか

退職代行とは、本人に代わって「会社を辞める」という意思を職場に伝えるサービスだ。利用者はサービス業者に連絡し、氏名・会社名・退職希望日などを伝える。その後は業者が会社の担当者に電話やメールで通知し、利用者本人は直接職場と関わらずに退職手続きを進められる。費用は数万円程度が相場で、当日の連絡代行にも対応しているサービスが多い。

メディアが一斉に報じた背景

「1日で100件超」という事実がそのままニュースになった。テレビやネットメディアが一斉に取り上げたことで、「退職代行=GW明けの風物詩」という認識が広まるきっかけとなった。数字が語ったのは、代わりに退職を伝えるサービスへの需要が、すでに無視できない規模に達していたという現実だった。

GW期間600件の内訳

4月26日から5月7日までの12日間で、モームリへの依頼は合計600件に達した。114件が集まった5月7日は突出した1日だったが、連休を通じて依頼は途切れなかった。

新卒79件、入社1カ月の決断

600件のうち新卒社員の依頼は79件、全体の約13%だ。「GW明けに新卒が辞める」という図式が注目を集めたが、残り87%は既に職場にいた社員たちの決断だった。HRzineの調査によると、2024年度新卒の退職理由の約半数は「入社前の条件と勤務実態の乖離」——長期連休中にそのギャップを再確認するケースが多いという。

15歳から83歳までの利用者像

利用者の年齢幅は15歳から83歳まで広がっていた。20代が全体の約60%を占めるが、残りの40%はそれ以外の年代が構成している。「若者だけのサービス」という見方が広まった一方、実態はひと世代に限らない利用層が存在していた。

翌年は824件――前年比137%の膨張

600件でも十分に大きな数字だったが、翌年はさらに更新された。2025年のGW期間(4月26日〜5月7日)、モームリへの依頼件数は824件を記録した。前年同期600件から137%増の数字だ。

単日では250件超に

2025年5月7日、GW明け初日の単日依頼は250件を超えた。2024年の114件からほぼ倍増した計算になる。前年に「1日100件超」が異例として報じられた数字は、1年後には新たな水準に塗り替えられていた。

新卒107件、しかし比率は横ばい

2025年GW期間の新卒依頼は107件。前年の79件から増加したが、全体に占める割合は13%前後で変わっていない。「GW明けに新卒が辞める」という見方が広まったが、依頼の9割近くは在職中の中堅・ベテラン層からだ。需要の拡大は特定の世代に限らず、職場経験を積んだ層にも着実に広がっている。

業界全体が同時に動いた

2025年GW期間、件数の急増はモームリ1社にとどまらなかった。複数の退職代行業者が同時期に依頼の増加を報告しており、特定サービスへの集中ではなく市場全体が膨らんだ構図が浮かんでいる。

なぜ連休明けに集中するのか

4月に入社した社員は、研修が終わって実務に入る中で「聞いていた話と違う」という違和感を積み上げていく。残業の実態、配属先、職場の雰囲気——しかし入社直後には声を上げにくい。その不満が、GWという10日前後の連休を経て一気に噴き出す。

家族や友人と過ごし、他の職場に勤める知人の話を聞く中で、「自分の会社だけがおかしいのでは」という気づきが確信に変わる。4月中に積み上がった違和感が、連休という時間に「決断」へと変換される。「もう職場の人と直接関わりたくない」という心理に、代行業者が間に入る退職代行の仕組みが合致する。GW明けの1日に依頼が集中するのは、偶然ではなく構造的な必然だ。

退職代行が「5月の風物詩」になった

この構造が毎年繰り返されることで、退職代行は5月の恒例として市場に定着した。2025年、退職代行の国内市場規模は約60億円に達すると予測されている。東京商工リサーチの調査では、大企業の15.7%が「2024年以降に社員が退職代行を利用した経験がある」と回答した。114件という数字が報じられてから約2年、退職代行はすでに一部の職場で日常的な出来事になっている。

ただし、企業側の見方は対照的だ。退職代行利用者に対してネガティブな印象を持つ企業は約75%に上り、転職活動への影響がゼロではない現実が残る。

退職代行の利用が転職活動に影響するリスクは依然として残る。次の就職先で採用担当者が退職代行利用を知るケースは稀だが、前職への問い合わせを行う企業が存在することは念頭に置いておきたい。

そして2026年2月、業界に最大の危機が訪れた。モームリを運営する株式会社アルバトロスの代表らが、弁護士法違反——弁護士資格を持たない者が退職交渉を代行する「非弁行為」——の疑いで逮捕・起訴された。

逮捕が利用者に与えた影響は現実的なものだった。手続きの途中だった依頼者は代行サービスの中断リスクに直面し、費用の返金交渉を迫られるケースも生じた。民間業者が「意思の伝達」にとどまらず法的交渉の代行まで踏み込んでいたことが、摘発につながったとされる。弁護士法人型の退職代行が同様のリスクを持たないのは、弁護士が関与することで交渉行為が法的に認められているためだ。

それでも需要は止まらなかった。「辞めると直接伝えたくない」という需要の根本は逮捕で消えるものではなく、弁護士法人型を含む他の退職代行業者が稼働を続けた。アルバトロスは一時休業を経て2026年4月23日に経営体制を変更して営業を再開し、モームリの公式発表によると再開後1週間で64件が確定している。2024年5月7日の114件は、退職代行という市場の存在を社会に知らしめた数字だった。今それは、業界最大手の逮捕と再開という激動を経てもなお拡大を続けるトレンドの起点として記録されている。