GW明けの新入社員からの退職代行依頼、全国419人に到達 前年2倍超

  • 2025-05-08
  • 2026-05-18
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退職代行サービスとは、本人に代わって業者が会社に退職の意思を伝えるサービスだ。自分で上司に退職を切り出せない、あるいは退職を引き止められるのを避けたい人が利用する。料金は2万〜5万円程度が相場で、スマホで完結する。2025年のゴールデンウィーク(GW)明け、このサービスを使って会社を辞めた新入社員が419人に達した。前年同時期の2倍を超える数字は、若者の忍耐力の問題ではなく、採用時の情報格差と企業の逆効果な対応が生み出す構造的な問題を浮き彫りにしている。

GW明け退職代行、全国419人の内訳

退職代行サービス「モームリ」(株式会社アルバトロス運営)が2025年のGW期間中、5月6日時点で新入社員(4月入社)から受け付けた依頼件数は419人に達した。前年同時期の189人から2.2倍への急増である。なお2024年5月7日(GW明け初日)には、新入社員に限らない1日の全体依頼として過去最多419人を記録しており、このうち約4割が新入社員だった。2025年はその「1日分の全体数」に匹敵する人数が、新入社員だけで積み上がったことになる。

2025年のGW期間中419人は新入社員のみの数字。2024年の419人(GW明け初日・全体)とは別の数値

前年189人から2倍超の急増

GW明けの時期に利用が集中する構造は、年を追うごとに鮮明になっている。189人から419人への増加は1年で起きたが、「連休明けに集中する」という傾向そのものは以前から変わっていない。

20代が6割、Z世代の「普通の選択肢」

モームリの利用者の約6割が20代だ。マイナビ転職の「転職動向調査2024年版」によると、直近1年間に転職した人の16.6%、約6人に1人が退職代行を利用しており、20代に限ると18.6%と全年代で最も高い数値を示す。「特別な手段」という認識は、少なくともZ世代においてはすでに薄れつつある。

では、なぜGW明けにこれほどの人数が一斉に動くのか。

新入社員が連休中に辞意を固める構造

退職代行モームリの調査では、新卒者の61.6%が「入社からGW明けまでの間に、一度は辞めたいと思ったことがある」と回答している。連休は、くすぶっていた離職意向が行動へ転換されるタイミングだ。

帰省が「比較」の場になる

地元に戻り、旧友や家族と近況を話す——このとき初めて「自分の職場は普通なのか」という疑問が生まれる。職場の中にいると、その環境が当たり前に見える。退職急増には、連休が外の基準を得る「比較の場」として機能している側面がある。

条件の乖離に気づく瞬間

新入社員(4〜6月)の退職理由の43.4%は「入社前の説明・労働条件と実態のズレ」だ(HRzine・退職代行モームリ調査)。求人票に「基本給20万円」と記載されていたにもかかわらず、実際の手取りが9万円台だったケースも報告されている。美容関連企業を入社直後に辞めた女性のケースでは、説明会で聞いた条件と実際の業務内容が大きく異なり、身だしなみへの過度な制限と威圧的な指導が重なった。連休中の振り返りで「この環境に耐え続ける必要はない」と判断し、退職代行を利用した。

54.4%が「配属ガチャ(上司や部署の当たり外れ)」に不満を感じており、約30%が「職場に相談できる相手がいない」と答えている。孤立した状態で連休を迎えた新入社員ほど、職場の外で初めて「辞めてもいい」と気づく構造がある。

7月以降になると退職理由に「いじめ・パワハラなどの人間関係」が加わり、1割以上増加する傾向がある。早期に辞める新入社員は、長く耐えた場合より傷が浅い段階で決断している——そういう認知が、退職代行の早期利用を合理的な選択として位置づけている。

43.4%という数字は「若者が忍耐力を失った」ではなく「採用時の情報開示に問題がある」ことを示している
退職のタイミング 主な理由・状況
早期(GW明け前後) 入社前の説明・労働条件と実態のズレ。傷が浅い段階での決断。
長期化(7月以降) いじめ・パワハラなどの人間関係が退職理由に加わり、消耗が深まる。

では、企業側はこの状況にどう対応しているか。

企業側の対応が裏目に出ている

75%が採用でネガティブ評価

東京商工リサーチの調査によると、退職代行の利用が発覚した場合に「採用しない」と回答した企業は26.0%、「採用に慎重になる」が49.3%で、合計75.3%の企業が利用歴をネガティブに評価している。退職代行を使った事実は、将来の転職活動に影響する現実のリスクとして存在する。

退職代行の利用歴が次の就職活動で不利になる可能性は、75.3%という数字が示す通り現実のリスクだ。

入社式での牽制が不信感を煽る

退職代行の急増を受け、入社式や研修で「退職代行を使わないように」と口頭で指示したり、誓約書に盛り込もうとする企業が現れている。しかしプレジデントオンラインの報道によると、こうした対応が逆に早期離職の引き金になっている。民法627条が定める通り、労働者は2週間前に申告すれば退職できる——企業に一方的に阻止する権限はない。

退職代行業者からの連絡を無視したり、「本人から直接連絡がなければ受け付けない」と業者への対応を拒否する企業もある。無視しても退職の意思表示は有効であり、2週間が経過すれば労働契約は終了する。「辞めさせない」という姿勢を入社初日に打ち出すことが、新入社員に「ここはブラック企業ではないか」という不信感を植え付け、GW中の退職決断を後押しする皮肉な構造が生まれている。

企業の対応が逆効果である構造が変わらない限り、翌年のGW明けも同じことが繰り返される。

退職代行は来年さらに増えるのか

退職代行市場の規模は2026年4月時点の民間推計で約60億円に達しており、縮小の気配はない。2025年度の新卒利用者は7月1日時点で1,072人と、前年同期比267人増で推移している(PR TIMES・アルバトロス発表)。

2026年2月、大手退職代行業者の運営会社代表が弁護士法違反(非弁行為)の疑いで逮捕された。しかし逮捕後も1週間で64件の依頼が確定し、業者はその後営業を再開した。法的リスクが表面化しても需要が消えなかった事実は、利用者にとって業者選びが新たなリスクになったことを示すと同時に、市場の根強さを裏付けている。

新たな動きも出てきている。残業なし・上司も温和な「ホワイト企業」でありながら、「このままでは成長できない」という不安を抱えてGW中に辞意を固めるケースだ。条件の乖離でも人間関係でもなく、「物足りなさ」が退職の引き金になる層の出現は、離職動機の多様化を示している。

採用時の情報開示、配属先の透明性、職場内の相談窓口の整備——HRzineに掲載されたモームリ調査が示すこれらの課題が解決されない限り、GW明けの急増は来年以降も繰り返されることを示唆している。

市場規模60億円・逮捕後も需要継続——退職代行の拡大は構造的であり、企業側の情報開示が変わらない限り一過性では終わらない
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